2016-10

「読み手を意識しない」       本井 英

「読み手を意識しない」   本井 英

     山の日や白菜畑のうつくしき 上村敦子
これは、ふっと口をついて出た句でしょう。立子先生の句のよう。人を嵌めようと思わないで出来た句。
読み手を意識して作ると一人称でなくなる。キャッチコピー的で泥くささがなくなる。そこには、俳句の未来がないのではないか。
平成二十八年十月十日、「小諸市俳句連盟」望月春日温泉吟行会での言葉。

〈このコーナーは筆者のメモです。俳人の言葉の意味を正確に捉えていない場合もあります。〉

2016-10-15 | Posted in 俳人の言葉No Comments » 

 

千曲川

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千曲川源流付近

千曲川

長野県北東部を流れる川。甲武信岳(こぶしがたけ)が源流。長野市で犀川と合流し、新潟県に入り信濃川となる。島崎藤村「千曲川旅情のうた」「千曲川のスケッチ」、山口洋子作詞、五木ひろし歌の「千曲川」などなど多くの文学作品の舞台となっている。

信濃なる筑摩の川の細石も君し踏みてば玉と拾はむ (万葉集 東歌)
山焼や夜はうつくしきちくま川     一茶
千曲川簗にかかりし胡桃茄子    森 澄雄
枯るゝ中藍たぎつなり千曲川    相馬遷子
青胡桃千曲川十里は雨の中     窪田英治

2016-10-15 | Posted in 信州の俳枕No Comments » 

 

曼珠沙華

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九月の中旬、四年程前に庭の隅に植えた曼珠沙華が咲いた。曼珠沙華は不思議な花だ。いつの間にか茎をすっと伸ばし、爪で宙を掴むように蕾をつける。そして、妖艶な花を開き、あっという間にとぼってしまう(実際には幾日か咲いているのだろうが)。昨日(10月5日)茎の回りをの草を抜いたら、土から葉が出始めていた。
曼珠沙華は、彼岸花・幽霊花・狐花など不気味な別名を持つが、稲と一緒に渡来したとも言われているので大切な花だったかも知れない。飢饉の時の非常食ともなったので、普段は人の近づかない墓地などに植えられたとも言われる。

つきぬけて天上の紺曼朱沙華      山口誓子
空澄めば飛んで来て咲くよ曼珠沙華   及川 貞
曼珠沙華咲かむと空へ爪をたつ     窪田英治

 

句集『熊鈴が』 児玉和子

児玉和子句集『熊鈴が』
2016.7月 ふらんす堂発行

とんとんと膝で揃へて稲を結ふ  児玉和子

昔なら何処の農村でも見られた情景。稲を一株一株鎌で刈る。それを数本の藁しべで束ねるのだが、その時切り口を揃える。私の父も母も膝でとんとんと株を揃え器用に稲を束ねていた。束ねられた稲は、一つ一つ稲架に掛けられる。
山の好きな作者は、句集のあとがきに次のように書く。「リュックサックに付けた熊除けの鈴を鳴らしながら、野山を歩き、風景を眺め、鳥や植物や昆虫に出会う。この楽しみのおかげで私の生活も俳句も大きな広がりを持つようになりました。」「熊鈴を鳴らして、『今、人間が歩いているから、出てこないでね』と、動物たちにあやまりつつ、山の楽しさを少し分けてもらっている」
こうした、自然を労り愛おしむ目は、旅の途中で会った人々の生活にも注がれている。
掲句にもそんな作者の優しい目が感じられる。

一片の雪を目に追ふ水面まで
城巡る一水ありて寒椿
銅の流しに跳ねて寒の水
青き踏む水神様のあたりまで
どの路地もみな抜けられて島の春
花の雨福竜丸の覆ひ屋に
二輪草がさかんに話しかけてくる
茄子植ゑて行灯囲ひしてありぬ
玉苗の溺るるばかり水漬きをり
夏帽を押さへて千曲川(チクマ)遠望す
虚子句碑の文字のぱらりと涼しけれ
風吹けばむむと膨らみ帚草
稲光遠き記憶のやうにかな
石の湯 稽古会 一一句(以下四句)
熊鈴が廊下を通る宿の秋
新涼の窓に白樺暮れ残る
秋冷の川曲(カワワ)に溜まる山の砂
八月が終はると雨を見てをりぬ
印形に残る朱肉や獺祭忌
コッヘルにスープの煮えて草紅葉
覗き見る舟屋は暗し石蕗日和
思ひ草枯れつつ色のなほ残る

2016-10-06 | Posted in ブログ, 句集を楽しむNo Comments » 

 

にいにい蝉 本井 英

にいにい蟬抑揚なきが疎ましや   本井 英
俳誌「夏潮」
2016.10月発行(通巻111号)より

にいにい蝉は、確かにみんみん蝉やつくつく法師と違い、じーじーと抑揚なく鳴く。それが却って疎ましいというのは面白い。
人の生活にも同じようなことが言える。毎日毎日が同じ調子で過ぎていくと、かえって気分が落ち着かなくなることがある。泣いたり怒ったりする日常は煩わしいが、退屈しない。
掲句の前に次の句が置かれている。
山梔子の実の真緑のよそよそし  英
普段、側にいて何かと世話をやかれると煩わしいが、相手にされないと物足りなく不満が生まれる。
人間はなんとも不思議な生き物だ。

2016-10-06 | Posted in ブログ, 佳聲を聞くNo Comments »