桃花水庵訪問者
曼珠沙華
九月の中旬、四年程前に庭の隅に植えた曼珠沙華が咲いた。曼珠沙華は不思議な花だ。いつの間にか茎をすっと伸ばし、爪で宙を掴むように蕾をつける。そして、妖艶な花を開き、あっという間にとぼってしまう(実際には幾日か咲いているのだろうが)。昨日(10月5日)茎の回りをの草を抜いたら、土から葉が出始めていた。
曼珠沙華は、彼岸花・幽霊花・狐花など不気味な別名を持つが、稲と一緒に渡来したとも言われているので大切な花だったかも知れない。飢饉の時の非常食ともなったので、普段は人の近づかない墓地などに植えられたとも言われる。
つきぬけて天上の紺曼朱沙華 山口誓子
空澄めば飛んで来て咲くよ曼珠沙華 及川 貞
曼珠沙華咲かむと空へ爪をたつ 窪田英治
かたくりの花
わが家の木陰にかたくりが咲きました。今年はずいぶん早い気がします。
5年ほど前に植えた株が大きくなってきて、周りに10本ほど一枚葉が
出てきました。増えている!楽しみが一つ増えました。
かたかごの花の辺ことば惜しみけり 鍵和田秞子
かたくりは耳のうしろを見せる花 川崎展宏
時流れきてかたくりの一つ花 加藤楸邨
堅香子の花うつむきて暾を待てり 窪田英治
福寿草
私の小さな家をここ八重原台地に建てて二十七年になる。二十代から家を建てたら「桃花水庵」と名付けようと決めていた。桃が咲く頃、雪解け水などで増水するが、これを桃花水という。その水のように、人や鳥が沢山集まって来るといいなあと思って名付けた。
桃花水庵への訪問者は、人や動物だけとは限らない。花が咲いたり、落ち葉が舞ってくる、霜が降るなどなども私を楽しませてくれる訪問者。
今回は、福寿草が訪問者である。
昨年は、二月二十五日に、開花した。今年は、暖冬のうえに雪の布団を被っていて温かかったからだろう。十五日の雨で雪がすっかり溶け、十六日には開花していた。
昨年よりも十日も早かった。
日の障子太鼓の如し福寿草 松本たかし
福寿草家族のごとくかたまれり 福田蓼汀
福寿草村に一人の帰還兵 窪田英治